Theme.01 広島県太田川水系 2日間で合計長寸10mを目指す!!

高揚感とプレッシャー

さて、いざ実釣であるが、天候は悪く今にも泣き出しそうな空模様。見上げる空に光はなく空気もやや重い。救いはあまり寒くないということと、こちらにも伝染しそうなほどに濱本さんが放つ、期待感や高揚感というところだろうか。初日の最初のポイントは市内河川の上流域。タイミングとしては満潮からの下げになる。干満差の大きな広島において、今日の小さな潮はかなり悪い部類に入るため、下げ潮がしっかりと機能し流心が出るのは恐らくかなりの短時間であることが予想される。

右岸から少しゆるい干潟を進み、立ち位置を決め、静かにルアーケースを開けようとしたその時、いよいよポツポツと雨が落ちてきた。これが始まりの合図となる。今回2人がメインで使用するロッドは、リリースされて間もない『Foojin’ADヴァンクール92H』。主に広島でテストを重ねたモデルで、ADシリーズで最も強いモデルとなる。秋の潮廻りにストラクチャーからランカーを引き剥がす目的で開発され、テスト段階から数多くのランカーを仕留めてきた。

僕のリーダーの先には『アイマサスケ120裂波』。濱本さんはアピア『ラムタラ・バデル』。バデルは既存の『ラムタラ』にタングステンウエイトを追加してスイミング調整された、アピアの新しいルアーである。このルアーが、後にキッカーフィッシュを連れてくることになるから憶えておいて欲しい。

まずは濱本さんに明暗を絡めた橋脚をしばらく撃ってもらう。というのも、この上流域のポイントは川幅も狭く、同時に2人が振れるスペースというものがないのである。また、下げ始めの潮が動く瞬間や川相の変化は一瞬なので、その瞬間に互いがキャストを譲るような気遣いが、釣果を削ぐ可能性もある。2人で取材を行なうということは、こういうことなのだが、ゲストはそれ以上にプレッシャーを感じていることがほとんどで、百戦錬磨の濱本さんも例外ではないはずである。時折、呼吸を整えるように大きく吸い込む息がそれを物語っていた。

「ああ、アカン! 心臓がバクバクゆうてるわ!」

そのとき、その場所でMAXと思える魚を出せれば、それはランカーと呼べる。

活性が下がったタイミングで沖のブレイクを叩ける遠投性能に優れた『ビットブイ』を投入。これも見事に決まった。

口を開いたときにはしっかりとした流心が現れた。それを見ての濱本さんの発言なのだが、この言葉は「そろそろ食うで!」と同じ意味を持つ。事実、数秒後には明暗からシーバスを引っ張り出しネットに収めていた。サイズは75cm。バデルをしっかりと咥えた、綺麗な個体だった。

その後、左岸に移動してからは、僕がほぼ独占して撃つ。同じポイントで1尾ずつ魚を出すことに今回の取材の意味があるのだが、今度はそれが僕にとってのプレッシャーになるわけだ。魚が出た状況はやはり濱本さんの時と同じだったが、何とか1尾のシーバスをキャッチ。コンディションは悪く、やはり下げが本格化してないことを物語っていたが、この日の状況ならば致し方ないところだろう。これで一応、釣ること自体が厳しいと予想していた夜の下げを乗り越えた。ここまでの合計長寸は1m43cmで、10mまで残り8m57cm。数時間後には、いよいよ河口のデイゲームである。